伝統的七夕ライトダウン2014キャンペーン

武部 俊一さんからのメッセージ

武部 俊一(たけべ しゅんいち)

科学ジャーナリスト

1938年生まれ。東京大学教養学部(科学史・科学哲学)卒。 朝日新聞科学部長、論説委員などを経てフリーランス(科学ジャーナリスト)。 科学と社会の関わりに関心を抱く。興味の対象は異星人、モーツァルト、ワイン。 著書に『宇宙開発の50年』『皆既日食』(朝日新聞出版)など。

お乳の川で泳いでみたいと夏の夢

都会では、天の川は想像の世界にしか流れません。「MILKY WAY」という言葉のもとになったギリシャ神話は壮大で、そして艶やかですね。怪力の英雄ヘラクレスが赤ちゃんだったとき、ヘルメスが女神ヘラのおっぱいを飲ませようとします。ヘラクレスが眠っているヘラの豊かな乳房に思いきり吸いつくと、びっくりしたヘラはヘラクレスをつきはなしました。すると、お乳がどばっとほとばしり出ました。それが天にかかる道になって輝いているということです。私たちの太陽系は、飛び散ったヘラのお乳のひとしずくというわけなのです。

東洋では、天の川をはさんで両岸に別れた織姫(ヴェガ)と牽牛(アルタイル)が1年に1回だけ出会うという伝説が生まれました。東西でこんな物語が生まれたのも、人間と星空が密着していたからでしょう。暗闇の下、星がもっと身近だったのでしょうね。

半世紀前の夏を思い返すと、都会でも夕涼みが盛んだった。打水をした庭や路地に置いた床几に座って 団らんのひととき。足元で蚊取り線香がくすぶる。頭上に淡く天の川が流れ、「笹の葉さらさら軒端にゆれる」の情緒が身近にあリました。そのような七夕を取り戻したいものですね。

昨年の初夏、ハワイ島の「すばる」望遠鏡を訪問しました。晴れ上がったマウナケア山頂から暮れ行く西の空を眺めていたら、水星と金星が並んで沈んでいきました。水星を肉眼ではっきり見たのは何十年ぶりかのことでした。「すばる」望遠鏡では129億光年も先の天体が見えるという世の中なのに、すぐそばの水星が見えにくいのは寂しいことです。 

2014-07-03(木曜日) - 22:09 pm | |