伝統的七夕ライトダウン2012キャンペーン

呼びかけ人:武部俊一さんからのメッセージ

2012七夕に寄せて
    節電の暗やみも愉し天の川

都会に住んでいると、夜空を見上げることが少ない。どうせろくに星が見えないからとあきらめている。 一昨年、南米チリのアタカマ高地に建設中の国際電波天文台ALMAを見学に訪れた際、山腹から見た天の川 の絶景に圧倒された。まさに降るような星々のなかで、地球上の自分が天の川銀河の一員であることをあ らためて実感できた。

半世紀前の夏を思い返すと、都会でも夕涼みが盛んだった。打水をした庭や路地に置いた床几に座って 団らんのひととき。足元で蚊取り線香がくすぶる。頭上に淡く天の川が流れ、「笹の葉さらさら軒端にゆ れる」七夕の情緒が身近にあった。

街灯もまばらで、世の中は暗闇に満ちていた。織姫(ヴェガ)と牽牛(アルタイル)が登場する七夕伝 説も、こういう闇の宵に語り継がれてきたのだろう。天の川の両岸に14.5光年ほど離れた両星が1年に1回 出会うというのは、科学を超えた伝説の世界のお話ではあるが..。

科学の世界では、ヴェガの回りに太陽系のような惑星系が形成されつつあることが観測された。何億年か あとには生命体が進化しているのか。17光年ほど先のアルタイルへ向けては、人類の電波メッッセージが 1983年に発信されている。もう着いているはずだ。そのうち返信がくるのだろうか。

伝説も科学の夢も楽しい。その舞台が少しでも眺められるように、明かりを消して星空を取り戻そう。


プロフィール
武部俊一 (たけべ しゅんいち)
日本科学技術ジャーナリスト会議会長
1938年生まれ。東京大学教養学部(科学史・科学哲学)卒。 朝日新聞科学部長、論説委員などを経てフリーランス(日本科学技術ジャーナリスト会議会長)。 科学と社会の関わりに関心を抱く。興味の対象は異星人、モーツァルト、ワイン。 著書に『宇宙開発の50年』『皆既日食』(朝日新聞出版)など。